イタリア北部から新型コロナ感染者が急増し始めたヨーロッパ。そのイタリアのロンバルド州に隣接した私の住むスイスイタリア語圏ティチーノ州は、スイスの中でも感染者の数が一番初めに増加し始めた州でした。日本人にはあまり知られていないスイス南部に位置する比較的温暖なこのエリアには、美しい湖が見渡せるハイキングコースや世界遺産のお城などがあることもあり、世界中から多くの観光客が訪れるリゾート地として知られています。私の住んでいるモルコッテ村は2016年にスイスで最も美しい村に選ばれた村でもあります。
そんな観光収入が重要な資金源であるこの州にとり、食用品店、薬局、銀行、郵便局、ガソリンスタンド以外の全ての商業の営業禁止の措置が3月16日より採られたことは、必然であったものの多くの人に経済に対する不安を与える結果を招きました。
またティチーノ州ルガノ市近郊はイタリアからの越境労働者が特に多く、病院勤務の医療関係者などは半数以上イタリア人に頼っておりますため、国境を完全に封鎖することはスイスイタリア人感染者にとって死活問題になりかねない。そんな中、少しでも感染者の多いイタリアとの行き来を減らすため、スイス人のイタリア入国を自粛する政策が取られ、イタリア人もスイスに入国するには労働許可書を持つ人のみが入国が許されました。
個人的には、通常イタリアのスーパーで買い物をして家計費を抑えていたので、今回のコロナ自粛で物価の高いスイス国内での食料品調達を余儀なくされ、すっかりエンゲル係数が上昇。そんなつまらない話をイタリアに住む友人に話したところ「外出に許可書がいらないだけマシよ」と言われて気がついたことは、スイスはフランスやイタリアに比べ外出許可届などをネットでダウンロードする必要なく食料品の買い物に出かけられる自由に恵まれていたという事実でした。
5月に入った今、感染者の数も減り11日よりレストランやスポーツジムなども含む全ての商業が再開。人々も街に繰り出し日常を少しずつ取り戻しています。また6月から始まる休暇シーズンに向け政府は「バカンスは自然に囲まれた美しい自国スイス国内で過ごそう」とのスローガンを揚げています。
環境汚染が深刻化していく中に起こったこのウイルス騒動。
人間の健康が脅かされる裏腹に自然界はその美しさを回復していく。これも自然に対して畏敬の念を忘れ始めた人間への何らかのメッセージなのでしょうか。
今回のロックダウンで更に自然美極まるスイス。「ウイルス去って山河あり」というのは大袈裟ですが、大気汚染が軽減したのは事実です。
コロナ収束というには正直言ってまだ早すぎる気がしますが、再感染拡大を起こさないため、また自然との関わりを深めるため今年の夏のバカンスは私も久々にゆっくりスイスで過ごします。この壮大な自然に触れながらコロナ後の人生を考える、そんな場にふさわしい国でないかと思っています。
日本の方々にも、この美しい自然に囲まれた素晴らしいスイス、また美しい森と山と湖に囲まれたイタリア語圏に訪れていただける日が1日でも早く訪れることを祈るとともに、皆様にお会い出来る日を心待ちにしています。
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